夕方1時間ちょっとの蒸発/初代ドリンク嬢
 
あの信号を左折
じゃなくてまっすぐ
山に向かって

 「海へ行くぞ」

三人道連れに
「マッテテネ」のおっぱいチラシを右に

 「これは海?」
 「これは川」

大きな橋を渡って
山の中

 「怖い?」
 「ちょっと怖い」

左にお墓があるから
急なS字カーブ
ガードレールはないから
落ちたくなるけど
落ちないように

越えれば海

     逃げて逃げて逃げて
     いつ私は羊になれるのだろう
     私の髪の数まで知っているというのに
     逃げて逃げて逃げて
     あなたに殺されるまで
     生きると決心した
     ただ
     手をつないで海を見れればいいのに

  「海だぁ」
  「海だねえ」
  「足つけてもいい?」
  「いいよ。夕焼けだねえ」

夕日の海の中を周遊船が帰っていく
海の家は誰もいない
私は一つ
大きなあくびをして叫ぶ

  「帰るかぁ!」
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