そして彼女は全ての夜に向けて祈った/テシノ
 
空がとても高かったので
煙草吸いはつい
ぷかりと一服くゆらせてしまった
やわい風に紫煙はゆったりと漂い
久し振りの刺激に脳が軽く目眩う

いたぞあそこだ!
至福の時を切り裂いて声が響いた
全く当たり前の話
ここにいますと狼煙を焚けば
追っ手に見つからない筈がない
煙草吸いは慌てて携帯灰皿で煙草を揉み消す
かつてそれはマナーと呼ばれたが
今では自分の痕跡を残さない為の術であった

駆逐される存在となって
どれくらい時が経っただろうか
彼は数少ない生き残りの一人だった
厄介な追っ手は改宗組だ
彼等は煙草吸いの生態をよく心得ていた

においがまだ残っている

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