世界のずれる音/朧月
 
見たくないという私の叫びが

みたくないよぅ  

と小さく響き

カーン
カーン

となにかの外れる音がした
それは世界のずれる音
背負った苦しみはきっともう
なくなっているよと気休めを

言おうと言うまいと見せまいと

終るときを告げている
ヒトの汚れた姿は
なにをもってしても清らかにはならない
踏んだ足の下にいるヒトを
見向きもせずに歩いてく
手を差し伸べて優しい笑顔を
作ったはずなのにこの目は
光など宿してはいない
己のことしか見ぬ
そんな手は汚れて
あなたの手についてる
黒い染みはいつついたの
こすっても落ちないそれは
生きるごとに増えてく

黒の手は何をつかめるの





戻る   Point(3)