耳だけが/kauzak
子供たちを寝かしつけて
朦朧とした頭を抱えて
ただジュースを飲みたいがために
サンダルを突っかけて外に出る
雨上がりの真夜中
起き抜けの身体はまだ夢の中
視界は頼りなげで
僕を包み込む夜にも現実感がない
ただ聴覚だけが冴えている
サンダルを引きずる足音
夜に匂い立つ虫の音
足取り重く駆け抜ける通勤電車
地下トンネルから顔をだす貨物列車
こんな時間に不釣り合いな
優しげな親子の会話さえも
小さな風呂場の窓から漏れてくる
乾いた音を残し
ジュースを吐き出す自販機
未だ夢の中をさまよう身体を
楽しみながら
ジュースを片手に空を見上げる
にじむ月が綺麗だ
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