想/草野春心
 


  哀なる愛と君は逢い、
  やがて霧中の夢と解る。
  負の歩を背に瀬を進めば、
  蒔いた舞から今日が始まる。

   焦がれた点は天へ。
   求める血は地を濡らし、
   粋なる水と巡る。
   碧い環の環に還る雫は、
   想、ひとつ……。



  憂なる夕と僕は言う、
  風に枷をされたまま。
  正の生を身に見る夢の後、
  吹きし眼の芽を明日へと放つ。

   名前を持たぬ光と、
   形を知らぬ光が、
   渾然の善を成す。
   善が全なる宙に翔ぶとき、
   想、ひとつ……。



   情が場を狭め、
   四季が識を区切れば、
   絶たれた間の間から
   時も空もこぼれ、
   無情にも霧消するだけ。
   言の弦を切り離し、
   粋なる水は血の地へ注ぐ。
   碧き環が芽吹く其の時、
   想を抱いた瞳に、
   総ての光が許される。





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