脈/古月
雨の中で開かない傘の重さを
忘れられず捨てられもせず
晴れの日には大きく腕を振って
あてもなく足を伸ばしたい
線路の向こう側は幹で
こちら側は根だと教わる
街路はひと続きのようでも途切れていて
わたし達の暮らしはいつまでたっても
なかったことにされつづける
*
呼称の指し示す範囲の
厳密な線引きに固執する
規則性と特質の
極めて言語的な流線
しあわせ、
と口に出して言う
たったそれだけのこと
*
通り過ぎていくだけの日々にも
足を戻し忘れることのないように
振り返れば朝の白々しい光の飛沫が
昨日の道を消しているから
もう少しだけ知らぬふりをして
歩いていける
そんな気がする
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