昇華/こしごえ
 
苔むした
石段をのぼっていく
息遣いを見守る
樹陰を、切るのは
ひからびた花を背負うおもい出した耳

頭髪も
白く(みずからの足音を聞きながら、
 零れる光の中を冷えていく舌が
しずまない花を吸っている。、
 わたくしをおぼえていますか?
 素肌のなめらかな曲線をうたえ原初に

みずみずしい空の青を
みつめているのは深いおもい出
まるくひとみをみたす風光

姿が見えなくなるくらい
遠い訪れ
足に苔が生えていた

生えている足の底をのぞきこんでみても
やわらかい血が流れている

一歩一歩朽ちていくかおりが
びこうをひらかせる
しめり気のあまく
きこえて来る浮葉
さぁー、っと青ざめて映る
きょりの先頭

その、時にわかる
影の表情に彩られた
鏡像を
合せ鏡する声紋へわたる
いっそうの舟に
青白い冷光の乗る
石段の行く先を
かたく清み)のぼり
のぼりきる






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