まだあたしが、あるいはあなたが。/ゆきちゃん。
 

まだあたしがあの山の焼け跡を
無邪気に紅葉だと思ってた頃

空はもっと広かったし
星はもっと光っていたし

あたしはもっと可愛かった

まだあたしがあの桜には
いつかきっとさくらんぼがなるのだと思ってた頃

満月はとてもキレイだったし
父も母もあたしを愛してくれていたし

あたしはもっと笑えていた

あたしはもっと泣けていた

まだあたしがアイスの当たり棒だけで
ただそれだけでとても幸せな気持ちになれていた頃

公園には仲良しな友達がいつもいたし
お腹がすいたら家ではハンバーグが待っていたし

あたしが眠る前には
誰かがそっと
優しく囁いてくれたのだ

おやすみなさい
怖い夢を見ないように
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