おじいちゃんの回覧板/小原あき
な
そんな人間に
わたしもなってきたと
思っていたのに
まだまだ
おじいちゃんに
追いついていない
わたしはそんなに
何人ものわたしを
持っていない
せいぜい二人ぐらいだから
そんなにばらばらにもならない
ましてや
回覧板なんて
必要ない
口頭で伝えるほうが
全然はやいからね
おじいちゃんと話そうにも
どのおじいちゃんと
話したらいいのか
わかんなくて
なんだか
泣きそうになる
泣いたら、
泣いたらまた
おじいちゃん
あの頃に戻るかな
まだ、自分のことしか
話すことができなかった
幼いわたしと
せいぜい四人くらいの
おじいちゃんを
器用に操っていた
おじいちゃんに
戻る 編 削 Point(5)