顔のない夢/瑠王
まだ、私の夢に虚無は訪れていない
スロウで駆けてくる
馬の筋肉の躍動が
私の夢を横切る
霧のように潤ったこの部屋で
枯れたダリアが
二、三枚の葉を落とす
紙風船のような歌声が
窓の外から浮かんでくる
私の愛した声色は盗まれた
外を見ずとも主がわかっている
双子がいる
対なる二つの名前を
何故か私は知っている
いつからか其処にいる
切り揃えた髪を耳にかけて
横顔よりやや向こう
知っているのに
君を確信できない
焦点はうなじにのみ注がれる
試みるが
思い通りにはいかない
窓を見る君は
何か言っているが
双子に耳は囚われたまま
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