夜に木になる/テシノ
その夜 声を盗まれて
お前と私が立ち尽くす
肩まで降りてきた空を
世界を
二人で支え合う
それが何故私達なのかもわからずに
拳を握って立っていた
足が地面に減り込んだ
このままでは朝までに
私達は木になる
木になってしまうのだろう
腕を伸ばして絡み合い
そのまま一つの幹となる
それでいいと思いながら
いいや 愛してなどいない
愛してなどいなかった
ある日西から旅人が来て
大木の幹にもたれていた
東からの旅人を呼び止め
互いの旅路の景色を語り
故郷の様子を少し偽り
一陣の風に口をつぐんで
ひそやかな涙を流す
声は
声は聞こえているか
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