仲秋の名月/あ。
週末の三条大橋はちょっとしたお祭りだ
駅から出てくる人と駅に向かう人
遊びに繰り出す人と帰宅途中の人
お酒や香水のにおいが混じりあい
鴨川では小さなジャズライブが行われている
駅に向かう人間のわたしは
厚いサックスの音を耳に挟みながら歩く
夕飯のメニューを考えながら
冷蔵庫に何が残っていたかを思い出しながら
人ごみに息苦しくなって顔を上げると
浮かぶ満月が瞳に飛び込む
朝にテレビで幾度となく繰り返された
仲秋の名月という言葉が活字になって脳内に踊る
都会が明るすぎるせいだろうか
月がまぶしすぎるせいだろうか
辺りに星や雲の姿を見ることは出来ず
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