言葉のない世界3 (建物の屋上)/ばんざわ くにお
こんな地方都市の半分住居の小さなビルでは
屋上のすぐ下まで人の生活の気配がする
が 屋上へはめったに人が上がらないので
屋上はやけに
世間ばなれしている
何十年も人が上がったことのない屋上を
下から見上げると
そこには白日夢の世界が
広がっている
そんな屋上に上がってみるのは
少し勇気のいることだ
そんなことを
年配の大工のおやじが
話してくれた
夕暮れに
そんな話を思い出しながら
地方都市のさびれた商店街を歩くと
誰もいない屋上に
懐かしいひとの気配を感じた
おとうさん
おかあさん
あなた達はそうやって
ずっとボクを
見守っていてくれたのですね
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