白い記憶/殿岡秀秋
 
白いシーツがうねりながら迫ってくる。ぼくはおおきなベッドに
いる。シーツは生き物のようにぼくのからだを捕らえる。シーツ
に巻き取られると、頭まで包まれて目の前が暗くなる。シーツが
締めつけてきて息が苦しくなる。これ以上締められると呼吸がで
きなくなりそうだ。顔が動かせなくなって、胸は不安の渦をまく。
そのとき、シーツがゆるんで息ができるようになる。シーツがほ
どけてゆくにつれて、からだがまわりだす。シーツがぼくを暗闇
に放りだす。闇の中を落ちていく、どこまでも。
底につかないと心配になったときに、大きなベッドが飛んできて
ぼくを受けとめる。ベッドはそのまま暗闇に浮いている。白い星
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