深緑/フミタケ
 
すえ永い福の西 
各駅で降りる 
八幡様が好きだった 
でもいつからか裏切ったような気持ちで 
お参りはしていなかった 
日曜日の境内はそれでも静かで 
巫女が作務衣の神職に何か指示を仰いでるのを遠目にながめる 
写真に写す緑は逆光が美しく 
何かが清々しく映り込む 
いつでもそう 
鳥居の周囲の写真にはそんな光が映る 
誰が映したものでも 
瑞々しく癒される 
胸の奥の絶対零度の井戸から何かが震えて溢れ出し 
歩を進める揺らぎのリズムを早足にする 
お参りをして 
にれいにはくしゅいちれい 
混濁する願い 
忘れて、ただ心を静かにし 
顔を上げて、脇によけ人
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)