豚カツと燗酒/……とある蛙
垂らし込み、
それをつまみにすぐ一合
追加の一合を頼んでいるうちに
楕円の銀盆に
大盛りの刻みキャベツと
湯気を上げたロースカツ
ちょっと悲しいパセリも添えて
ー誰がヒレなんぞを頼むもんかい。
豚は脂で食うもんだいー
(ダイエットだぁ ふん)
女房に内緒の密かな愉悦
一切れ口に頬ばれば
サクっとした薄手の衣
その中から現れた
豚の脂身と肉片のチャンピョンコンビ
油から立ち上る
ブタ
ぶた
豚の
味と香り
油まみれの唇に
向かって桜正宗の
熱燗急いで流し込む
そしてソースをかけ回し、
刻みキャベツを放り込む
同じ所作を何回か
残った二切れ
おかず用
ご飯一膳と
豆腐の味噌汁
食べる食べる食べる
食った食った
と満腹で
それでも酒は別腹と
また、居酒屋へ向かおうか。
それとも腹ごなしに徘徊か。
千円二枚
五百円
テーブルにおいて秋の宵
これが密かな悦楽で
(ダイエットだぁ?ふん)
ほんとに豚カツ好きだもんね。
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