夕暮れ/オイタル
 
「ただいまァ。」
 八月。
 庭の潅木が、白い地面に真っ黒な影をいくつも落としています。
 暑い盛りです。
 四月から通い始めた保育園から帰った娘は、日焼けの顔で畳に膝を落とし、さっそくブロックを持ち出しておままごとを始めます。赤いの青いの色とりどりの、両手からはみ出すような大きなブロックが、周りに山積みです。
「こんにちはァ。いつもどうも。お世話になってェ。」
 玄関でお客様に頭を下げている祖母の口真似に夢中です。
 姉の帰りに気付いた弟が後ろから近づいて、
「ねえちゃん。」
呼びかけても知らないふりです。
「はいはい、じゃ、お花屋さんにお買い物に行きましょうね。」
「ねえ
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