家族/水町綜助
 
石を蹴ったら靴が脱げて

靴を拾いに行ったら国境を越えた

そんな風に僕はあいさつをして

君はバナナを一本僕にくれた

皮をむいて

あまりおなかは空いていなかったけど

バナナはやっぱり甘く

おいしかった

黄色い皮は酸化して黒ずむ

薄い黄色の身は噛みごたえもなく

もくもくと口を動かすと

ちょうど口に出せない何かを飲み込むようで

飲み込んだバナナはその日の僕をはしらせ

翌日の僕となった

昨日の僕は

今日バナナを食べるなんてこと

考えてもいなかった



桜の花びらが落ちるのを目で追ったら

そこは川
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