「想いと言葉」/広川 孝治
言葉にすると陳腐になるもの
例えば「愛してる」
一晩中煮込まれたビーフシチューのように
あらゆる種類の想いのエキスが溢れかえり
熱く熱く
そして
濃ゆく濃ゆく
あなたへのオリジナルな想いが
心にから噴き出しそうなのに
言葉にして宙に発した途端
八百屋の軒先に並べられた一盛りいくらの野菜のように
ありふれていて見慣れた安っぽいものへと変貌を遂げる
がっかりしてため息一つ
想いを伝えるのは難しい
例えば「ありがとう」
ピカピカに磨いた日本刀を髪の毛一本で頭上にぶら下げているかのような
命がけの思い
それがあったから生きてゆける
あなたの存在と言葉と行いが
自分
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)