相思草/水居佑梨
 
慣れた手付きで取り出された深紅の玉手箱

憎らしい程の眼差しを向ける私に
あなたは気付いているのでしょうか

そっと焚きつけた灯りに近付けて
あなたの人差し指たちが
引力を持つように
恐らく私の体内には
それはもう大きな磁石が
埋め込まれているに違いありません

軋むスプリンクラーに身を任せ
柔く 甘く 甘美に包む
あなたの匂いに満たされて

喉元に張り付く それ が

私の首元を締め付けるのです

口寂しいと嘆く私に
吐きだされた靄が 思考が
全てを丸飲みにしてまう闇の中で

ごちそうさま

喉まで出かかった言葉が
只々そう告げていて
そっとあなたに笑いかけるのです

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