スパイ女房/青木龍一郎
 
かえた。
「大切に育てるからね…。おっぱいだってきっと出る…」
そう言って、静かに西松屋を出た。

外では、依然として銃弾や爆弾が飛び交っており
空は戦闘機で埋め尽くされていた。空は汚い赤色だった。

「この子達が立派に育ったとき、第三次世界大戦もきっと終わってるよね…」

そう呟き、6人の赤ん坊を抱えた僕は
足下の死体を飛び越えて
瓦礫に埋もれた赤黒い街を走り出したのだった。




















「だからスパイ女房ってなんですか。まじめにやりなさいとしゆき君。
 全く…親の顔が見てみたいわ…」
「僕、お母さん
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