終わる世界/e.mei
ひとつのメルヒェンが世界を往復するあいだに
路地裏の女はひらがなで大きく書かれた
しなないという文字を
街の中心地へと押し出そうとしている
(光の海で星と泳ぐ少女の物語も日が暮れる頃には薄れていく
六月に生まれた少女は冷たいという感情を
知らないまま大人になるのだろう
毎日僕は誰かに送る最後の言葉をさがしているのだけれど)
一言目にはしなないと言ってください
路地裏の女は目を伏せて言った
仕組みなんて誰も知らないと続けたあと彼女は祈りを捧げた
まっすぐに切り取られた世界の上では少女の種子が芽を出している
ひかりがきえる
ろうそく
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