名前について (3)/あらら
あなたの名前に 指を絡め あなたの名前に そっと 唇をあてるのを繰り返し 繰り返し見つめてから もう一度唇をあて あなたの名前に 舌を這わせる
あなたの名前に 指先を 滑らせながら 唇で吸い あなたの名前を 軽く噛んで 舌を絡める
あらわになった あなたの名前に 頬を埋め その柔らかさ 滑らかさ 暖かさを 確かめる もう一度 掌で確かめる もう一度 唇を そっとあて 何度も 確かめる あなたの名前を 何度も 見つめながら あなたの名前へ
あなたの かたちが 揺れ 震え 動く
あなたの名前に もっと 力をこめ 腕を廻し もっと 力をこめ もっと きつく もっと 抱きしめる
心もからだも名前を呼び合う声さえも何もかも既に誰のものでもなくなっていて今や取り返しもつかなくなっているのだというのにただ闇雲に互いに取り戻そうとしているものがいったい何であるのかは既に私たちには分からなくなっているのだそれでもひとつだけ間違いなく言えることそれは
あなたの名前を呼ぶことで
私はこの世界のすべてを感じ取とることができるということ
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