火葬/佐藤章子
レンズ越しに見える葬列
蛙の鳴き声に包まれて
猫背のわたしは
足跡のない欠けた部屋にいる
栗の木が窓の方へ手をのばして握手を求めるけど
押し出してくる風のせいにして逃げ出した
さっきまであったはずの何かが見えない
参列者が花を蒔いて
世界の終わりだと言う
赤い空に続く鉄塔
白線に聖書が並んで
踏みつけた神様がわたしを笑った
ぼんやりとした月が雲を隠していく
それは三年前のあの子の色と同じで
もう声がとどかない
水の流れる音で生きていけるのなら
答えが見つからなくて
煙突から煙があがった
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