詩人のティッシュ(満帆さんに韻文レスバージョン)/佐々宝砂
 
件の記事にあのひとはかなしむ、
私はうすらわらう。
あのひとはやさしい。
とてもやさしい。
でも、
あのひとはきっと、
私が死んでも泣きはしないだろう。

謎のキノコが私を殺さなかったので、
山から戻って私は再び机の前にすわる。
すわるほかない机の前に。

「きみが無意識の世界へとすべりこんでゆくまえに」
私の愛した歌手が、
ジム・モリソンが、
私の排泄物を収めたうすっぺらな箱の中で歌い始める。
私の排泄物と彼の美しい言葉が同居すること、
それが不意にどうしようもなく悲しく思われて、
ばかみたいに涙が。

ああ。
でもジム・モリソンはこの箱の中にはいない、
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