rapture of the deep/あすくれかおす
漫画を書いたり散歩にでたりした。求められない世界を求めて。不可能をルールにして可能性を探した。ラジエーターの熱、エンジンの匂い、いなくなったお父さん、魔法瓶のビール、ですます調で笑える世界、蝋燭も朗読も、ぜんぶが可能なはずだったのに、急げば急ぐほど、どんどん自分を遅くした。そこにはもう花畑はなかった。花束を作りすぎることができたのに。
産み出すために、殺す、ということだって、可能だったはずなのに。
*
もう一度ボンネットを開ける。ラジエーターをハンマーで壊す。宇宙人が傷つくみたく、きれいな緑の血が流れる。キーを回す。エンジンが起きる。
これからどこへ行くんだろう。頭のなかで、何度もシャッター音がなる。すがりついていた思考が、次々と剥がれていく。静けさを直訳できない。アクセル。クラッチは踏まない。回転数に沿ってギアを滑らせる。エンジンが燃える。燃えるたんびに、懐かしい匂いがする。
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