この一瞬のために/もこもこわたあめ
 
今にも泣き出しそうな 夜闇の中
一羽のカラスが 仲間にはぐれ咽鳴(な)いている
今にも泣き出しそうな 夜闇に紛れて
一組の男女が 友に祝福されて泣いている
  
   -刹那-
   あなたのあたたかな体温に触れた 気がした
   羊水よりもぬるく そして やわらかい 感触

何一つ遮る音のない 静寂の中
0,1秒でも長く 遠く届けとねがう虫の声
何一つ遮る音のない 静寂から
秋の夜を愛でる宴の 陽気な人たちの声
   
   -刹那-
   あなたのひかえめな吐息が鼓膜を掠めた 気が した
   あなたの匂いを僕の中にしみこませる 響き ゆっくりと じっくり
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