夜/
乱太郎
夜が起き出して
今夜はと舞台衣装に着替える
黒い不安と白い恐れの鍵盤を
交互に叩くその曲は
泡立つ恍惚の光り
濡れた海を拭くように
満月の落した布が
昼と夜の境界線から漂う
かもめはいない
見えない声の渦巻きを
時折風が木の蔦を辿って
鼓膜の外側に運んで
聞こえているかと尋ねている気がする
すすり泣く女の声が
谷間で流れて
希望を失った女の涙が
星座をくぐり抜け
夜明けを憎みながら
幻想曲の胎内で呼吸する
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(10)