トンボとんで/ルナ
 
ちぎれちぎれの茜雲のもと
飛びかうトンボの色が
世の中の色を更に朱に染める

桜並木、葉に紅がまざり
隣に流れる大河は
やわらかな日差しを受け
こがね色に輝きながら
音もなく流れる
更に雄大な
海へと

昨晩は雨が降ったようで
わたしの足元には
小さな水溜まりがあった
今の太陽には
この水を消す力も無いようだ
そして
つがいのトンボが
いずれ消えるであろう
この水に
懸命に次の命を産み落としていく

わたしは蹴った
何故ここなのかと
すぐ隣におまえたちの未来
消えない水があるのに
何故ここなのか

わたしは蹴った
ここにはおまえたちの未来は無い
何故もどる
何故まわりを見ない
何故ここから動かない

何故
どうして
動こうとしないんだ
おまえの行くべき場所は
ここじゃない
おまえを受けとめてくれる場所は
すぐ近くにある
お願いだから
気付いて欲しい

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