夕焼けについて/オイタル
車のドアを開けて
アスファルトに降り立ち
ゆっくりと
夕焼けを踏む
夕焼けについて書こうと思う
古びて傾いた夕焼けについて
それは人通りのなくなった街道の
傍らに立つ廃屋の壁に
擦り傷のように貼りつく
役立たずの夕焼けである
はるか西に伸びる道の奥の
峠を越えて下ったほの暗い海から
夕焼けは誰とも言葉を交わさず はるか
ひた走りに走ってきた
そして早々と女に出会い
目のところでその身を
断ち切られてしまった
女について書こうと思う
雨の女の眼について
その女は さわさわと鳴る
栗の木の梢の下
そこだけ円く雨のふる
黒く汚れた国道に立っていた
一
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