バルタン星人(怪獣詩集)/角田寿星
暗闇に
浮かび上がる 無駄のないシルエット
黄色く光る 大きな丸いふたつの眼だけが
無表情にこちらを覗いている
バルタン星人だ。
両手のハサミを重そうに持ちあげ
分身を残しながら 音もなく歩み寄り
泡から生れてくることばのように
不確かな像をむすぶ
宇宙忍者
バルタン星人だ。
「生命…?セイメイとは何か。わからない。」
マッドサイエンティストに母星を破壊されて
20億3千万の同胞と共に地球に逃れてきた
0次元の羊水に笑い
母の胎内で妖しく明滅
自らのハサミで胎盤を這い破る
3次元のダイオードを求め
仮想と現実のダーク・ゾーンをさまよい
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