森/ogawa hana
 

わたしたちの氷は寒いところでは鉄(くろがね)となり、暑いところでは樹木となった。すんと
も言わないがらくたのような意志を、迷い込んだ空洞にひとつずつ、植樹していった。
幹のいちばん深いところに出来た血溜まりを大きなスプーンでひと掬い、浚った。


少年がまわりくどくうながす、肺胞の部屋の扉に一年毎、ひとつずつ鍵掛けてとじて
ゆく。閉じ込められた子供が泣き叫んでやがて静寂する空耳。わたしはわたしはお辞
儀をする振りをして項垂れる。

   
星の数ほどの
心変わりを
深閑の森で見上げては
笑っていた


せまい空間に、朝がいつも押し込まれるようにして幅を取る
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