架空の城/殿岡秀秋
 
割った石を硬い石で叩いて
形を整えて積みあげる
石と石との間には剃刀も通らない
石の壁は数百年を経ても崩れないで
空に近く雲をしたがえて
城塞と都市とを保っている

毎朝通勤電車の始発駅から
シートに座って
携帯パソコンを叩いて
ぼくは言葉の石を削り
一字一字
積みあげていく
行と行との間に
文字になる前の言葉の破片を詰めると
透明な想いが流れ
言葉の空間が生まれる

職人のからだはリズミカルに
無駄なく動き
石の壁を蓮の花のように
組み合わせていく
築かれた天空の城は
気持ちも汗もさわやかな職人の手になる
膨大な時間の結晶だ

アンデスの山奥の
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