名無し/こしごえ
いちわはうらの杉林の中を通りすぎていき
羊歯の林を光が、
しゃらしゃら とゆれる時
噴水の流れはしゃらきゃら反射しており
公園のブランコにやせた足
とおくをみつめている
常温のワイシャツが透けて
沈黙は浮彫になる
ある空き地の土管はタイムトンネル
今日もころがっているけれど
一番星の瞬く
羽はおおわれたまま、光とともに
焦点を自転車の鍵を
ふりかえることのない
時計台ののびた影
ゆくゆくは
体温のほの暗い
よこがおが水平線につっ立つ
私の
静止する無限軌道
二番目にこわいのは 全ての思い出
一番おそろしいのは自身いつまでも、己は己
流れながらも
今宵。直立した電信柱の電灯に、
ちらりちら と
舞う白い影
青ざめたれもんにかじりつき
胸を明け放つ果汁
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