ロク/小川 葉
ろくでなしの父親が
息子が来年
六歳になる頃には
幼稚園に行かせてやると
飲みながら大ぼらをふいて
株価を上げようとしている
職場では
仕事をどんなにこなしても
それがあたりまえのことなので
株価は上がらないけど
職人だから
仕方がないと思っている
奥さんが
外車が欲しいのだと
社長に聞いた
娘は東京の
私立大に
行かせるのだとも聞いた
ふざけるな
と思ったけど
思えば僕もそんな家に
生まれ育ち
外車も私立大もなかったけど
そんなのが嫌で
家を出て
手に職しか持たない
男になってしまっていたけれども
その男が
なぜ
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