帰ってきた沼でフライロッドを継ぐ/北村 守通
沼は待っていてくれた。ホテイアオイは相変わらず所狭しと繁殖し、岸際を覆っていたが昨日ほどではなく、私は胸をなでおろした。この分ならば、釣りになるだろう。キャスティングするのに邪魔になる風もない。まだ私の腕では風に合わせて会話をすることはできなかったので、この状況は大変ありがたいものだった。早速、準備に取り掛かることにし、私はフライロッドを取り出し、はやる気持ちを抑えつつそれを継いだ。持ち主に相応しい値段で購入されたそれは、もうコルクグリップが手垢にまみれて真っ黒になっていた。私でもここまで酷くはない。そろそろ消しゴムで汚れを取ってあげなくては可愛そうだとも思いつつ、その黒ずみの一つ一つが自分自身
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