悪魔の子/ツキミサキ
 
「僕は悪魔の子なんです。」
と、彼は言った。

彼の両親は教師で
彼の弟も頭が良かった。
勉強が得意ではない彼は
「親に言われるんです」と言って
ニコッと笑った。

並んで自転車に乗っていると
突然彼が
「場所を変わりますよ。」と
左右逆になった。

「何で?」と不思議そうにしてる私に
「車が来たら危ないですから。」と
彼は言った。

車道側に居た私を気遣って
場所を変わってくれたのだ。

あの子が
カラオケでよくうたっていた
あの曲を聴くと
ふと
この場面を思い出す。

悪魔の子との思い出。
優しい
悪魔の子との思い出。

もう
彼とはずいぶんと会っていない。

今頃彼は
立派な悪魔になれたのかしら?
それとも
天使になったのかしら?
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