竦みあがった鉄塔/KETIPA
 

それどころか動物か植物かすら   もういない
それより連れている山羊の体調がよくない


こんなくすんだ地の中から
場違いにのびた鉄塔があった
上から突き刺さったようにも
下から突き上がってきたようにも みえる
とりわけ強く日光を浴び続けて
もう金属疲労なんてものではない
老朽という表現もまだ足りない

彼らの注意はただ
その銀光りする鉄塔の根元に
湧き出ている半透明な水にそそがれている
彼らがまきあげたしぶきをあびた
ので鉄塔は
乾ききった土壌のような細かい亀裂がはしった
縮みあがった鉄塔の振動音は太陽行きの集団にまで響き渡った



太陽集団はそれを音楽と勘違いした
戻る   Point(3)