人差し指の肯定/あぐり
アイデンティティの喪失なんて言うほど大仰なもんではないにしろ
僕はやっぱり珈琲を美味しく飲もうと思って駅前に行く
アザミが何本か生えている筈の丘は
見事に草が刈り取られていて
アザミに何の思い入れもない人達によって
例外なくアザミも消えていた
何かを運命だとか必然だとかいうつもりはないのです
君が貸してくれた本を読みながら
いつの間にか氷は全部溶けて薄い液体に変容していたし
今すぐにでも会いに行きたいなんていうのは
幼稚じみた考えなんでしょうね
何かを運命だとか必然だとかいうつもりはないのです
ただ今日アザミが見られなかった僕は
帰る場所
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