耳に残る眺望/プテラノドン
それ以後、鉄塔に上ることは不可能
となった。首を吊ったコンビニ店長は、一晩中、
風に揺れていた。その姿を ビニールが
引っかかっているだけと、近所の人はやり過ごした。
壁を塗り直すだけでは事足りず フェンスで囲んだ
太い橋げた。その一本には真っ青なスプレーで
喧嘩で死んだ男の名前が印され、数年経った今でも
手つかずのまま残っている。
橋の上なんかから地面に落っことされたら
誰だって死ぬに決まってる―
枯れた献花は 風に、缶ビールや酒瓶の類は
乞食の胃の中へと運ばれていく。
土手の下に広がる夜の闇は
その二つの事実を、景色として飲み込んでいた。
街灯の道筋の繋がりは、いくつもの別の存在を
証明するためだけにあった。
土手に面した民家の飼い犬が 未だ見えざる者、
こちらに向かって吠えていた。
匂いを辿ったのか、影を臨んでのことなのか
僕としては、そいつなりの励まし方なんだと
思いたい。
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