夜の翼/仲本いすら
数センチの隙間から見る世界は、私にとって
とても、それは、とても薄明のような光景で
時折過ぎてゆく、子ども達の声が不思議と、
風船を飲み込んだようなこの喉に響くのだ。
枕元には、しばらく漂っていた私の咳が
しぼんだままの身体で着地している
そうして、そいつを撫でることで
私はようやく思い出すのだ
* *
庭の鯉は手を二回叩くと顔をみせるよ
あの大きな桜の木のしたには、ミイコが眠っているから絶対に切っちゃだめ
私の痰壺は洗わなくていいよ
あなたまで、夜の翼になってしまったら
私、いやだもの
* * *
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