シンスキーの世界/テシノ
リモノと違うぞ
ゼリーに垂直に突き刺さって動かない姿に
死んじゃった!ゼリーで溺死!と姉は騒いだ
落ち着け私も最初は相当焦ったが
正座させて飯を食わせるわけにもいかんのだ
ただ生きているだけの生き物に
人間達が一喜一憂する様を見て
犬はこの虫が大嫌いなようだった
「見なけりゃいない」という犬の理屈を発動する
ある日よく似たヒカリモノが
蜘蛛の巣に引っ掛かっていた
思わず蜘蛛と戦ってしまったのだが
そいつは礼も言わずに飛んで行った
外来種だから逃がしちゃいけない筈だった
しかしその力強い羽音を聞いてしまうと
虫カゴで今もゼリーを垂直に攻める姿が
ただ生きているだけの虫カゴの中の姿が
わかっているのだそういう事ではないのだと
ただ生きているだけなのだあの虫もこの虫も
今私が何を感じ何を考えたとしても
だけど虫カゴああひたすらにその時私は虫カゴ
寿命を聞いたのはつい先日だ
蛹からかえったらひと夏らしい
最近私を覚えたかしがみつく事を厭わない
私はいまだにこいつの正式名称を知らない
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