砂の杯/智鶴
 
乾いた星に目を奪われていた
無機質な感情を夜の闇に纏わせて
空を突き刺す電柱の陰
べたついた空気を振り払えなかった

僕はまだ怯えている
変身していく僕の深層
ガラスを砕くように
崩れ落ちていく世界を空想する
氷のように美しい世界の中
僕はただ馬鹿みたいに
冷たい息で笑い続けることしかできない

例え何もかもを許されても
讃えるものなんて何一つない


破壊衝動と


叫びを


何もない
この空間と僕達の呼吸
必要なものは何もない
残酷な美しさを永遠としたこの世界に
美しいものなんて何一つとして

氷細工が崩れる音と
僕があげた断末魔
意識はもう揺らいでいく

水に映るような曖昧な世界に
砂の器で皮肉な乾杯を


「美しい世界に」
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