高度文明/ぽえむ君
 
していた
決められている速度を超えて走っているわけではなく
とりわけ運転以外のことを考えているわけでもなかった
彼は早い段階から
交差点で一人の男が倒れているのに気がついた
それでも
彼は走ることをやめなかった
それは信号機の色が青だったからだった
進むことを許可された社会規則に従おうとした
彼はまったく動けなくなってしまった
彼は車を止める意志をもっていた
それでも
彼はまったく動けなくなった
もはや彼は意思と身体が切り離された
それだけではない
彼は交差点という社会と葛藤を起こした
彼はただ目だけを開いて
どんよりとした空を見つめながら
原始古来の人間の本能
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