花屋の娘/唖草吃音
僕の要件が紙飛行機のなかで眠っている頃
望遠鏡の夢はテキサスにスプーン2杯分の時間を投げかけた
アラモの赤土に鳥は埋もれそこから何本も白い骨が出た
透きとおったままのダリア路上に眠る懐中時計
お粗末なつくりで売れっ子になった花屋の娘
ガラス越しに空を映していたサンタフェの町
高所恐怖症の太陽やテーブルの上の朝をみていた
こんなに空が遠いとは知らなかった
鎖を噛み切れない犬
悲しみは7マイル先で新たな恋を見つけたと
カビ臭い劇場で花屋の娘は歌っている
たった一度の相槌で
みんな眩しそうに目を細めてしまった
汽笛に暗喩されてゆく少年時代
故郷の旗を作ったから掲げよう
沈む夕陽はミルを回すようにわざとらしく薫った
お粗末な父お粗末な母お粗末な兄弟
花屋が店じまいをはじめる頃娘は白い馬に乗って帰ってくる
屋根のうえ星屑の遺書を夜風が奪い合う前に
琥珀の記憶は朝焼けに旅立つだろう
熱っぽい血は僕に聞こえないだろう
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