スモールワールド/あすくれかおす
 


明るさを見失ったら夜。何も言うことがなくなったら朝。
西と南に窓のあるへや。背丈の伸びた笹の葉が揺れる。
道ゆく人に涙をみせてはいけないよ。お前の宝石を生け捕りにされてしまうよ。
朝。夢見がちにパンをかじっている。強い突風。
イヤホンの片方がさらわれる、自分だけの大音量は、
その正体は、世界にむかって小さく喋るスピーカーだった。



ぼくが考える小人の話をしようか。
小人は夢をみない。寝ている間は次に建てる、茅葺き屋根のことだけを考えている。現実を比較したりしない。茅葺き屋根のことだけを考えている。起きている間は麦の穂を拾ってくることもあるけれど、それが命をつないでる
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