巣/伊月りさ
 

この大樹は頑丈だけれど
この大樹は寛容だから
蜜は、寄せつけすぎるのです
胎内にはなれない

なので、わたしは巣をつくる
不揃いの卵も満遍なく孵る場所
きみが美しいと感じるものが
命となって飛び立っていく場所

抱擁の小石、
後ろめたい枝、
わたしの言葉で塗り固めると夕暮れがくる
そして夏は過ぎ
薬指には指輪の日焼けができていた

そうしてやがて巣になりたい
ひとつずつを取りこぼさずに
拾い集めてわたしにしたい
そして車座の卵の中心
陽に温まる内側の
わたしたちを温(ぬく)めていたい
裸の抱擁を守っていたい

そう、
守れるのだと思っているわたし
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