選挙/プテラノドン
よかれといっても、
投票箱に硬貨を投げ入れる真似をしてはいけない。汗を流しながら
市民体育館の駐車場で議員ががなり立て、
夏は過ぎようとしているが、投票権を持たない子供らも
自転車にまたがったまま、あいつの方がマシだとか
あいつの顔はどうだとか、約束事などどうでもいいという具合で、
話の種を探している。住民たちが出払ったその間、
留守をあずかる案山子の心臓を、カラスが一突きする。
ズタボロだな。と、朽ち果てた衣装を前に誰かが声をかけたが
新たな衣服を授けるわけでもなしに皆見てみぬふり。
はなからそういうもんだと決め込んでいる。
まきあげられた金も。タバコの煙も。人の通らぬ、この道路も。
会場とは別方向の市場へ出かけた父親も祖父も
そのことを咎めやしなかった。どうせいずれは分かるだろうし、
俺も昔はそうだったと言う。
或いは、町中で
誰よりも何よりも早く年老いていくのは選挙ポスターだった。
刻まれた皺、無闇やたらに生やされた髭
それは、一本の心ないペンによってはじまるのだ。
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