散ル散ル朽チル/瀬崎 虎彦
 
散ル散ル朽チル

September, high tide 気がつけば
波高き9月になって風の音が憂鬱を
足元の砂に埋めて 耳元でいつまでも
鳴り続けていた千のアリアをそっと
水に溶いて空に投げた

October, love song とめどなく音楽が溢れた空
階段を登りきって急に開ける風景が
君をそっと写し取った 鮮やかな水彩画のように
今もまぶたの底に輝く

君がいなくても
言葉がなくても
音楽はいつも変わらぬ色彩の中で
君がいなければ
僕など意味もなく散ってく 朽ちてく

November, white sigh ため息は立てたコートの襟元に
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