夏の軌跡/銀猫
眩しい舗道に
蝉、おちた
鳴くのをやめて
飛ぶのをやめて
褐色の羽根に
ちりちりと熱が這い上っても
黙って空を仰ぐ
湿った真昼をまとい
木陰にくっきり分けられた、
アスファルトの白黒を辿ると
燃え残った蝉時雨が降り注ぎ
髪の奥まで濡れそぼる
わたしには
蝉ほどの潔さもなく
夏を葬る風から
後ずさり
後ずさり
小さなからだは
間もなく轍のあとかた
そうして時が止まれば
夏を失うこともない
樹液より緩やかに滴る、
単調な音色は
刹那の七日
それ限り
かなしみはない
永遠もない
次の夏を待つばかり
(待つ、ばかり)
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